帰ってきたヒトラー 感想

とあるきっかけで見逃していたヒトラーを見ようと思い立って検索すると角川シネマ新宿64席ミニシアターで復活していたました.ありがたや~と手を合わせながら突撃してきました.

コメディとして楽しめる部分は大いにある.がしかし,政治的メッセージが直接的すぎて品がないなぁと感じたのも事実.ゼンゼンブリングのシーンで爆笑しなかった人は人生エアプ.

語り語り,そして語るヒトラーを誰一人として理論的に否定できずに作品は終わります.映画内映画のサヴァツキが言い返せずに発砲した流れは現代人のパンピーの弱さが感じられて好きでした.実際は精神病棟に隔離されていたためもっと弱かったわけですが.

さて後は政治的な話題.

欧州に流れ込む移民がきっかけとなって可視化されてきた現在の社会システムの限界を解決する手段が何かないか世界中が探しているわけですよ.でもその中の選択として絶対にタブーだと建前では言われ続けてきたいわゆるナチズムにつながる他種排斥や優生思想は,実際問題色々なところで現れて一定の支持を得てきているわけです.為政者はきっとそこを歯がゆく思いながらもその時その時の最適解としてそれを見出しているから人って悲しい生き物だねと思う.

では個人として僕がこうしていきたいと思っていることはなんだろう.今回の映画内映画のサヴァツキがいい淀んだシーンに自分が置かれたとしてどうやったらヒトラーを否定できたのかなと.そういう人物として本作で描かれているからだとしても,個人として相対した時自分が否定しきれる自信がないのがなんというか2016年に生きている自分として恥ずかしいなあと感じるわけです.作品でヒトラーの異質さとして残されて描かれていたのが犬の殺害とユダヤ人の血に関する言及でした.多分明確に否定しなきゃいけないのがその二つですと.

でも僕ペットってそんなに好きじゃないんですよね.売り場に並ぶほど数を大量に確保できている種で,飼い主とのつながりがほとんどない個体なら持ち主へ相当の対価を支払えば別に撃って殺してもいいかなーと.と書いているうちに強烈な違和感を感じてきた.正しい殺生感を身に着けたいぞー.

あとは優生思想.これは明確に否定するべきだと感じた事件が日本でも起きましたね.障がい者施設での大量殺人.あの時に犯人が書いていた文書は様々な問題を優生思想を元に肥大化させた解釈で覆われていて思わずTwitterで同調している人がいないか検索して確認してしまいました.(案の定というべきかこんなものに同調するなよというプロ市民の方々がたくさん引っ掛かりました.)施設で働く健常者の労働環境の悪さと障がい者が存在してもいいかという問題は全く持って別次元の話なので混同してはいけない.そして後者は絶対に否定しなきゃならないんだけど言葉の理論と実際の行動はこれまた乖離している側面があって難しい.

殺生感の獲得,優生学の否定.をタスクに追加しました.